あ───、西野さん、は、いる。
……あれ? でも、智政は一緒じゃない。
西野さんはパッと見、ちょっとチャラそうな男子と何やら楽しそうに話している。
隣でお弁当を持った女子が待っている感じなので、これからお昼に行くのだろう。
あれ、じゃあ智政は───?
ついチラ見するだけのつもりが、気付いたらガッツリ教室の外から中を覗き込んでしまっていて、目の前に暗い影が出来て初めてハッとする。
「藤崎じゃん。何? 誰かに用事?」
「えっ……あっ、加藤!?」
目の前に1年の時同じクラスだった加藤が居て、見知った顔に思わずホッとする。
加藤は赤星とも仲が良くて、昼休みとかもよくつるんでいるのを見ていたからか、コイツ2組だったのか、と改めて自分の運の良さに少し気分が上がった。
「あ、えーっと、用事っていうか……あっ、そうそう! とも……浅倉君って2組だったよね?」
──“浅倉君”だなんて、6年間使っていた自分の苗字なのになんだか変な気分だ。
それに、智政を苗字で、しかも君付けで呼ぶなんて更に変な感じがする。
だけど今の私は、智政とは他人なのだからこれが普通で。
それでなくても本来ならば、大人になるまで智政とは交流さえないはずなのだ。
そう頭では分かっているのに、妙な虚無感に襲われる。
だからか自分の心に蓋をするように、声量を落として加藤に尋ねた。
