──『会いたい。奥さんがいてもいいから、もう一度あなたとやり直したい』──。


………そう、これだっ!

二度と思い出したくないフレーズだったけれど、今は救いの神のように感じる。

そうだ……! そうだよっ!!
何も今の私の状況を無理矢理変えなくても、智政と西野さんの二人を“別れさせなければ”いいんだ……!

二人がどうして別れてしまったのかは分からないけれど、智政は確か高校の時に別れてしまったと言っていたはず。

だったら二人を別れさせないようにすれば、未来で万が一私と智政が知り合ったとしてもきっと他人のままでいられるはずだ。

そしたらきっと、私の未来も大きく変わるはず……!



そう思ったら居ても立っても居られなくなって、私は勢いよくトイレから飛び出して“2組”へと走り出していた。




***

2組の教室がある場所は普段足を踏み入れないエリアで、心なしか少し緊張する。

同じ校舎でも中央階段を挟んで反対側ともなると、用事がない限りほとんど近づくことがない。

しかも時間がないことに焦って勢いだけでここまで来てしまったけれど、二人を別れさせない方法なんてまだ何も浮かんでいなくて、段々と怖気付いて来た。
更に2組に近づくにつれて、周りが知らない顔だらけで歩く速度まで落ちてくる。


やっぱりもう少し考えてからにしよう、と通り過ぎるだけの人を装う事にして2組の教室をチラリと覗き見た。