第1話




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“前科”を持つ人間が真っ当に生きていけるほど、この国は甘くない。


約半年勤めた酒屋さんの店長にお辞儀をしながら、改めて痛感せざるを得なかった。


「どうして黙っていた!?」


「・・言うと雇って頂けないと思いましたので。」


「ウチは客商売なんだぞ・・?

【殺人犯】を雇ってる店だと本店にバレたら、俺のクビが飛ぶところだったんだぞ!?」



何がキッカケで私の名前をグーグル検索したのかはどうでも良かった。

検索すれば記事が出てくるのはどうでも良かった。

どこの新聞社の記事を読んだのかはどうでも良かった。


でも・・・


「店長も・・そういう人だったんですね・・。」


「あぁ!?」


「私のこと・・“殺人犯”って一括りにするんですね・・。」


「なんだ逆ギレか!?」



調べたんなら・・入り口で引き返さずにちゃんと調べて欲しかった。


声に出さずに言葉を飲み込むと、改めて半年間のお礼を言って店長に背中を向けた。