姉のカレシの、闇に溺れて




 初めて誰かを連れ込んだ。
 『家族がいるから大丈夫』と、何かと理由を付けては無理やり引っ張り込んだこの部屋を見て、紗和は固まってしまった。


 無理もない。
 だって、俺は一人暮らしなんだから。


『座って』と、リビングのソファーに紗和を座らせる。


「ホットミルクとか飲む? っても、来客用のカップなんてないから俺のに入れるね」



「…………あの、悠一さん、家族は」


「ああ、うん。アレね、ウソ。俺一人暮らしだから」



「………………私、帰ります」



 勢いよく立ち上がる紗和に、冷たい目を向ける。1分1秒でも紗和がいてくれる理由を考えろ。


 ……………考えろ。


「俺、この家に人入れたの紗和が初めてなんだけどな…………」