姉のカレシの、闇に溺れて




「やだ!! 離して!!」


 私の腕を強く引く悠一さんに逆らうことができず、数分歩いてタクシーに乗り、着いた場所は高級そうなアパートだった。


「……………ここは」


「俺の家」


 ……………悠一さんの家。どうしよう、連れ込まれても家族の人は家にいるのかな。



「紗和、安心して。家に家族いるから。ただ、紗和とゆっくり話したいだけだから」


 ”一人暮らしってワケじゃないから”と、私に念を押す。



 …………話すって何を。
 私は話す事なんて何もないのに。



 動こうとしない私に、


「…………外では話せない沙羅ちゃんのことだけど」


 と、一言吐き捨てた。