姉のカレシの、闇に溺れて




「…………え」


 悠一さんはお姉ちゃんと私を間違えたから謝罪に来てるんだ。その事実は変わらない。


 ――――だけど、

 謝りに来てて『あんなに気持ちよかったのに』なんて言葉………出る?


 動揺するな。
 知らないふりをすれば大丈夫。絶対に誤魔化せる。


「覚えてません………」


 どうしたら良い?
 どう返事を返すのが正解?


 寂しそうな悠一さんの顔を見ながら必死で考えてみるけど、全然分からない。


 …………何が正解なのか全然分からない。


 どうしてそんな顔をしているのかも分からない。


「俺さ、誰かとくっついてあんなに気持ちよかったことなんてなかったよ。だから紗和ちゃん――」


 やめて。
 やめて、やめて!!!


 『気持ちよかった』とか、謝罪に関係ない事は持ち出さないで!!!


「悠一さんは昨日の夜、私とお姉ちゃんを間違えたから謝りに来たんでしょ!? 謝ってくれても昨日の夜に仕出かしたことは消えないんだよ!! お姉ちゃんへの罪悪感はずっと、死ぬまで消えないんだよ…………」