姉のカレシの、闇に溺れて





 かといって、南瀬くんが皆に『好きだったら何が悪いんだよ』と言ってしまった手前、事実じゃない事を言ったとしても聞いてもらえるはずもなく……


 誤解を解きたいのに、解けないまま放課後になってしまった。


 『月野帰ろ!!』と、クラスの視線を気にしない南瀬くんは私を誘ってきた。


 私なんかといたら、それこそ南瀬くんの株が下がってしまう。
 

「………やっぱり大丈夫。早々会うことないし……」


「でも、会うことあるかもしれないじゃん」


「私が気をつければ大丈夫」


「気をつけるって?? どう気をつけるの? 男の力に勝てるはずないじゃん」


 ……………そうだけど。
 嘘をついていてアレだけど、でも、まだ悠一さんが私を襲うと決まったワケじゃないし……


 今の所、私のいい加減な自意識過剰で話が進んでしまっている。


 これ以上、私の事で南瀬くんに迷惑をかけたくない。


「―――――大丈夫。本当に大丈夫だから!」


 南瀬くんの善意を拒絶し、学生鞄を持って逃げるように教室を後にした。