姉のカレシの、闇に溺れて




 俺が座っている横に来ては、恥ずかしそうにちょこんと座った。


「ねぇ、今からする??」


 甘えた声で俺の腕に抱きつく。


 『シ足りないとこ悪いけど、オマエ全然気持ちよくなかったよ』


 出かかった言葉を必死に飲み込んだ。



「……………それより、紗和ちゃんがいないんだけど。学校に行くには早くない?」


「え、いつもギリギリに出るのに………」


 沙羅は『どうしたんだろう?』と心配しながらキッチンへと目を向けた。


「…………あっ!! 紗和、お弁当忘れてる!!」


 …………弁当。
 沙羅は見ての通り今起きてきたし、親はまだ帰ってない。自分で作ったんだろうか。


「じゃあ、取りに戻ってくるかな??」


「……いや、いつも紗和には絶対財布に3000円は持たせてるってお母さんが言ってたし、お昼は買うんじゃないかな??」


 …………ここで俺が出しゃばって『学校まで届ける』なんて言い出したら変に思われるか??


 ………いや、昨日夜まで話し明かした仲なんだ。


 ――大丈夫だ。


「せっかく作ってるのに勿体ないし。俺が紗和ちゃんに届けるよ」