姉のカレシの、闇に溺れて




 けれど、しっかり私の手を握ってくれている。


「俺はただ、月野を守りたいだけ」


ボソッと吐かれた言葉に、南瀬くんの優しさを感じた。痛いくらい、南瀬くんの手を握り返す。



 何も知らない姉は、玄関に出てきては表情が一変した。……いや、私を見てから表情が変わった。



 ―――無理だよ、南瀬くん………



 今更、お姉ちゃんにどんな言葉を投げかけても、現実は変わらない。



「……………紗和」



 ”紗和”お姉ちゃんの口から出た名前を聞いて、悠一さんも『紗和』と心配そうに出てきたが、南瀬くんと、私の、繋がれている手を見て、眉をひくつかせた。