姉のカレシの、闇に溺れて





「俺は沙羅ちゃんに言ったはずだよ。紗和が大事だって」



「言ったかもしれないけど、まさか”紗和と付き合いたい”って言い出すなんて思ってない!!!なんで!!! 何でそんなに紗和がイイの………」



「『沙羅ちゃんも好きな人とか俺以外に作って良いからね』って俺、最初に言ったよ。ちゃんと聞いてないのは沙羅ちゃんだろ」



「………………………でも、言われたかもしれないけど、わかんない………」



 ――泣き出す姉の声に、胸が痛い。



 悠一さんがそんな事を姉に言ってたなんて……全然知らなかった。


 二人の喋り声にまた、耳を澄ます。



「紗和とはヤッたの……?」



 ……………ッ。
 心臓がバクバクする。
 ………悠一さんは何て答えるの??


 悠一さんの事だから、絶対にお姉ちゃんを傷つける。絶対”ヤッた”って言う。



「――ヤッてない。紗和には何もしてない。ただ、俺が一方的に好きなだけだから」