姉のカレシの、闇に溺れて




 沙羅を睨むようにして見る俺に、沙羅も目にいっぱい涙を溜めている。



「俺、紗和が大事だ。沙羅ちゃんよりもずっとずっと、紗和が大事なんだ。だから沙羅ちゃんと別れたい。紗和とずっと一緒にいたい」


「ふざけないで!!! 紗和が大事って、何!?私と別れたいって、何!?」



「俺は沙羅ちゃんに言ったはすだよ。紗和が大事だって」



 何ヶ月も前に言った事を、掘り返す俺に、沙羅は煮えきらない顔をする。



「言ったかもしれないけど、まさか”紗和と付き合いたい”って言い出すなんて思ってない!!!なんで!!! 何でそんなに紗和がイイの………」



「『沙羅ちゃんも好きな人とか俺以外に作って良いからね』って俺、最初に言ったよ。ちゃんと聞いてないのは沙羅ちゃんだろ」



「………………………でも、言われたかもしれないけど、わかんない………」



 付き合った当初に日常会話ついでにサラッと言った事だ。


 沙羅の事だからすぐ忘れるかなとも思っていたけど、それでも俺はちゃんと言った。



 紗和に惹かれる俺も悪いけど、話を聞いてない沙羅にも非はある。