紗和が勢いよく部屋から飛び出し、こんなに寒空の中外へ出ていってしまった。



 紗和が走るその姿を、紗和の部屋を窓から眺める。



 紗和がこんなに求めてくれてる今、もう、沙羅と一緒にいる意味はない。


 紗和は渡さない。


 絶対、誰にも渡さない。



 紗和が家から出て行った10分後。沙羅が『ただいまー!』と、家へ戻ってきた。


 同時に俺も1階へと降りる。



 俺の感情など何も知らない沙羅は、


『ユウくんー! 今日、親帰ってくるの日付変わってからだって! もう少しいてくれる?』


 俺に精一杯のカワイイ声を出す。



 …………そのぶりっこな声も態度も、いい加減やめてくれ。


「もちろん。俺も沙羅ちゃんに話したい事あるし」


「ええっ?? 本当? そうだ。コンビニで晩ごはんとか買ってきたけど食べる!?」


 コンビニの袋から鮭のお弁当や焼肉弁当やおにぎりなどを出す沙羅。



 せっかくなので、塩おにぎりを一つ頂く。