姉のカレシの、闇に溺れて




 紗和も紗和で、沙羅に気を利かせて『悠一さんありがとうございました。今日はこれで終わりにしましょう』と、プリントを片付け始めた。


 ……………ちっ。
 このバカが戻ってきたせいで。


「ええっ!? ユウくんが教えてるの見たかった!」

 ――と、可愛く見えるように頬を膨らます沙羅。


 俺は紗和でしか興奮できない体になってしまったのに、今日、沙羅を抱けるだろうか。


「ユウくん、部屋行こ??」


 勝手に横でムラムラし始める沙羅。
 ―――睨むように体に目を向ける。


 ――――紗和を抱くためだ。
 紗和を抱くために、沙羅を抱く。


 『悠一さん、片付けは私がやっとくので!』と、俺に100%の気遣いを見せる紗和に『ありがとう』とお礼を言って、沙羅に腕を引かれたまま部屋へと上がる。



 部屋へ入ると、ドアを閉めずに俺にねだりだしてきた沙羅。


 …………キスすらもしたくない。


 元々、沙羅には『抱けない理由で悩んでいる』という事を、以前話している。心配もしてくれた。


 最悪、ウソで押し通すしかない。