「ッツ……!! まったく、沙羅ちゃんの蹴りグセは相変わらずだな」
…………ウソでしょ。
お姉ちゃんが蹴りグセがあるなんて……
ククッと笑うその声にもう、全てを諦めた。
「……そうだね、今日は時間遅いもんね。また今度シようね。じゃ、俺トイレ行って戻るね」
悠一さんは『じゃあね』と耳元で囁いて、私から離れると、パタンと部屋のドアが開け閉めする音が聞こえた。
一旦追い返す事に成功し、肩をホッと撫で下ろす。
それから悠一さんが戻ってくるかもと身構えていたけど、隣の姉の部屋のドアを開け閉めする音が聞こえた。
どうやら今度はちゃんと、姉の部屋に戻ったらしい。
安心と恐怖と罪悪感で涙がボロボロと出てくる。
悠一さんが悪いワケじゃない。
悠一さんはただ、お姉ちゃんと私を間違えただけだから。悠一さんは悪くない………



