姉のカレシの、闇に溺れて



 紗和の部屋に行きたい気持ちを我慢し、そのままリビングのテーブルに着いて待っていると、

「お待たせしました……」

 ――と、大量のプリントと教科書とノートを持ってきた。

「大荷物だな。俺も一緒に運んだのに」

「いや……悠一さんに部屋に入られたら何されるか分からないので。悠一さん、お姉ちゃんとの時間もあるし、早く終わらせましょう」

「うん、そうだね。それじゃ始めようか」

 横に座ってほしいのに。
 警戒しているのか、俺の正面に座る紗和に『こっち来て』と、隣のイスをポンポンと叩く。

「でも……」

「紗和の方に向けながらだと教えにくいし。早くしないと沙羅ちゃんが風呂から出ちゃうからさ」

「…………分かりました」


 渋々俺の横に座る紗和。
 だけどワザとイスを離され、また距離を取られる。

 …………そんなに警戒しなくても、今更だろ。
 ――グイっとイスを寄せ、ピッタリと紗和にくっつく。


「ちょっと! 悠一さん!!」

「何? 逆にそんなに離れられちゃ教えにくいだろ」