姉のカレシの、闇に溺れて




 ”心配しないで”と言いはしたけど、やはり無理がある。紗和の顔は強張ってしまっている。


 これ以上不安を与えないように、無理矢理話題を変える。


「そういえば、学校の勉強どう??頑張ってる?」


「…………あんまり成績良くは……ない」


「俺、教えるの得意だよ。教えてあげようか?」


「……………いや、いいです!絶対変なコトするから」


 なかなか鋭い紗和に、『そうだね』と、心の中で相槌を打つ。それでも引くワケにはいかない。



「でも、成績良くないんでしょ?」


「………………でも、悠一さん絶対変な事するし」


「でも、成績良くないんでしょ??」


「……せっかく教えてほしいなって思ってたのに!『絶対変なコトしない』って誓ってよ!」



 顔を真っ赤にして怒る紗和がおかしくてつい、笑いが溢れる。



 ごめん、誓えない。
 無理。絶対無理。


 だって今も、繋いでる手を引き寄せて抱きしめて、手出したいって思ってる。