姉のカレシの、闇に溺れて





 理由はなんであれ、昨日悠一さんにはカフェでの料理代とホテル代を払わせている。


 悠一さんはただの大学生だ。


 そんなにお金があるとは思えない。



「…………でも悠一さん、お金………」


「紗和、高級料理食べたいんでしょ?? 俺、今日バイトの給料日だったし、紗和がそこのオジサンに”この間高級料理奢ってあげたから”って、後々弱み握られてもイヤだしね??」


 ……………バイト。


 悠一さんバイトしてたんだ。


「ね、俺もイイですよね」

 と、爽やかな笑顔でオジサンの心を動かす悠一さん。オジサンも悠一さんの笑顔に当てられて『キミも来てくれた方が助かる』と悠一さんも来ることを了承してくれた。


 ……………何を考えてるの悠一さん。


 オジサンと友梨ちゃんの後ろを、私は悠一さんと一緒に静かについていく。



 そして、私にしか聞こえない声量で、


「紗和、後から説教だからな」


ボソッと毒がある言葉を吐いた。



 …………どうしよう、悠一さん怒ってる。