姉のカレシの、闇に溺れて





 …………南瀬くん!?


 お姉ちゃんが下から叫んだということは、まだ悠一さんも玄関先にいるということだ。


 …………よりによって、南瀬くんと悠一さんを会わせてしまった。


 でも、南瀬くんは前に悠一さんに一度会っている。


 その時に姉のカレシってことも伝えている。


 …………大丈夫なはず。何もないはず。


 頻繁に迎えに来てくれるワケじゃないのに、なんで今日に限って……



 急いで財布とスマホをリュックの中へ入れ、鞄を持ち、転びそうになりながらも部屋を出て玄関へと向かう。




「………………………み」


 咄嗟に口を塞ぐ。
 南瀬くんと悠一さんが睨み合っていた。


 『南瀬くん』と、名前を呼ぶことも許されないような、凍りついた空気が漂っている。