「あの時の痴漢……じゃなくて、あの人、悠一さんだったんですか!? スミマセン、私………」
「いや。俺もあの時風邪引いてたからマスクして顔あんまし分からないようにしてたし。不安にさせてごめん。それより俺が抱きついたせいでトラウマになってないか気になってたんだ」
「大丈夫です!! というか、あの時はおもいっきり踏んでしまって……足、大丈夫でした??」
「大丈夫。俺、そんな軟じゃないから」
悠一さんの柔らかい表情にホッとした。あの時は最悪な出来事だったけど、あの人が悠一さんだったと知ると、逆に良い思い出になった気がする。
それから姉と悠一さんとワイワイ他愛ないお喋りをしていると、日付が変わってしまっていた。
「私、風呂に入らなきゃ!!」
慌てて立ち上がる。
姉と悠一さんも『俺たちはもう寝ようか』と目を合わせて頷いていた。
「お姉ちゃん、悠一さん。おやすみなさい」
「おやすみ」
………楽しかった。楽しすぎた。
また家に来てほしいな、なんて思いながらお風呂場へと移動する。



