伊月は透明人間なんじゃなくて、本当に透明になってしまっていた。


1ヶ月も前に、伊月はこの世を去っていたのだ。


それを無理矢理に引き留めていたのは私で、私の泣き声を聞いて私の前に姿を見せてくれたのなら、伊月はやっぱり伊月だ。



優しくて、優しくて。


その優しさに甘えてしまって、私はずっと向き合えなかった。





「さっきはごめん」


勇大が気まずそうに謝った。

その声がひどく重たくて嫌だった。



「もう勇大も、伊月が見えなくなっちゃったんだね」

「…………」



私の言葉に口を閉ざす勇大に、胸がギュッと苦しくなる。





あのね、私も。


もう、伊月が見えないの。





言いかけて、言葉が喉に詰まった。

息がうまく、できないや。