――呪われているのかな、私……。


 そんなことを思っていると斜め前、違う列にいるが少し遠い、赤い眼をした女の子と目があった。
 私の気持ちに気付いたのか、首を横に振ってくれている。


「雨ってば、まったく……。この頃、過保護すぎだよ」


 少しだけ笑ってしまう私。
 雨が何かしら手を下したわけではないのは知っている。夏休みの間、私はそのほとんどを彼女と一緒に過ごした。そのどこでも雨が一人で出かけたのは見たことがない。


 とにかく三人がいなくなった今、もう私は暴力を振るわれたりすることはないだろう。だけど、クラス内での無視や、腫れ物のような扱いは変わらない。周囲の空気がそれを伝えてくるのだ。
 それは悪い噂を持つ雨も同じ。けれど、私には彼女がいて、彼女も私を必要としてくれているはず。辛かった高校生活にやっと平穏な日々が来たのだ。
 しかし楽しい時間は瞬く間に過ぎていく。それは誰にも止められない。私にだって、彼女にだって。
 そう、この世界の誰にも楽しい時間というのは止められないんだ。