翌日、いつもの時間に登校すると、下駄箱の中に薄い黄色の封筒を見つけた。多分糊で封がしてあるそれには、表にも裏にも何も書いてなくて、だから沙耶は悩んでしまった。…これは、何の手紙だろう。ここに置いていった人が、場所を間違えているっていうことはないだろうか。

(…見ても、大丈夫なのかな…。相手を間違えてるんだったら、見ない方が良いのかな…)

そんな風に下駄箱の前で考え込んでいたら、後ろから背中をぽんと叩かれた。

「沙耶、おはよう。何してるの?」

「あ…っ、ああ。おはよ、優斗」

差出人も分からない封筒を、咄嗟に隠す。でも、優斗にはすぐにばれてしまった。

「なに? 手紙じゃん。沙耶、もらったの?」

「…もらった…、っていうか、下駄箱に入ってたの…。…場所間違えたのかなあ?」

戸惑う沙耶の応えに、優斗が嬉しそうに笑った。

「そんなの、間違えるわけないじゃん。そっか、沙耶にも春が来るんだね!」

「えっ、そういう手紙?」

優斗は、沙耶の問いに、また笑った。しかも、すごく浮かれている。

「そりゃ、そうじゃないの? そっかー、そっかー。良かったな、沙耶」

「いや、良かったとか、そういうのじゃないよ? 多分」

あまりに優斗が浮かれているので、傍から見ると手紙を受け取ったのが優斗みたいに見える。でも、本当に沙耶に宛ててこの封筒が届けられたのだったら、ちょっと困るなあ、と思った。

手紙を手に、躊躇う空気を感じたのか、優斗が、どーしたの? と首を傾げた。

「…や…、本当ににそうなら、どうしよって思って」

「なんで? 会ってみたら良いじゃん。なんで『どうしよ』なの?」

優斗に問われて、沙耶ははっとした。…先生のことは、言えない。だから、そんな気になれない、という理由を優斗に説明できないのだ。