テストが終わって、その答案用紙が返ってくる頃になると、天気は一層曇天が多くなった。まだ入梅には早いと思っていたのに、もう嫌な季節が来てしまうのだろうか。そんなことを考えているうちに終礼が終わり、一気に教室内がざわめいて、沙耶も優斗の方へと視線を送った。優斗は、鞄に教科書などを突っ込みながら、振り向いて沙耶の視線に、うん、と頷いた。テスト期間が終わって、部活動が再開されている。優斗の所属するラグビー部も先日から練習を再開していて、沙耶はラグビー部の練習のないときにでも、テストのときに数学を見てもらったお礼をしたいと思っていたのだ。

優斗が鞄を提げて沙耶の席へと近づいてくる。

「今日は練習は良いの?」

「うん。なんか、顧問の先生が今日居ないんだって。昼休みに先輩から連絡が回ってきたんだ」

「そっか。じゃあ、駅でファストフード食べていかない? 私、おごるわ」

「え? ホントに? やった」

優斗が満面の笑みで応えると、沙耶もなんだか安心した。優斗のなにが不安ということもないのだけど、やっぱり優斗はこうやって笑っていてくれる方が似合っているし、沙耶も彼の隣で安心できる。沙耶も鞄に教科書を詰め込むと、席を立った。

「じゃあ、行こか」

「うん」

そんな風に話して教室を出ようとしたときに、「あー」という声が窓際から聞こえた。二人して振り向くと、数人のクラスメイトが窓の外を見ている。なんだろう? と思って教室の中へ戻ると、窓の外にはぽつぽつと雨粒が落ちてきていた。

「降ってきちゃったのかー」

「でも、今朝、降水確率四十パーセントだったし、もった方じゃないかな?」

「そうかも」

沙耶も優斗も、ちゃんと折り畳み傘を持ってきている。鞄の中のそれを確認して、二人は一緒に教室を出た。