考えたことが一緒だったのか、芽衣もいつもみたいにのんびりとは歩かない。テストに追い立てられている生徒みたいに歩いていたら、ふと校門脇を通りかかる人影を見つけた。

「あ、崎谷先生」

「ほんとだ。おーい、センセー」

芽衣が崎谷先生に向かって手を振ると、崎谷先生もこちらに気づいた様子で、手を上げた。それに応えるように芽衣が先生のほうへと向かっていくので、沙耶もそれを追った。

「先生、なにしてるの?」

「いや、ちょっと、学校周りを歩いてた。ついでにゴミ拾ったりとか」

言いながら、先生は左手に持っていた白いビニール袋を示して見せた。どうやら空き缶やペットボトルのようなものが入っているようだった。

「お前ら、ゴミはちゃんとゴミ箱へ捨てなきゃ駄目だぞ? こうやって掃除する人の身にもなってみろ」

「私たちはしてませんよー。他の人じゃないの? ね、沙耶」

芽衣に振られて、沙耶も頷く。今だけじゃなくて、今までにも、ゴミを道端に捨てたことは、学校に上がってからはないはずだ。もっと子供の頃のことは、わからないのだけど。

「まあ、そうかもしれんけど、一応だ」

「先生の方が、ポイ捨てしてるんじゃないの? 携帯灰皿とか、持ってなさそうだもん」

「阿呆。ちゃんと持ってるって」

芽衣と崎谷先生の会話に、沙耶は少し驚いた。崎谷先生が煙草を吸っていることを、沙耶は知らなかった。