試合は、僅差で優斗たちが勝った。グラウンド中央で選手同士で礼をしてから、集団がばらけた時に、優斗が沙耶たちに向かってガッツポーズをして見せた。沙耶たちは腕を上げて拍手をして、優斗の活躍を称えた。横尾先生も拍手をしていた。

「さーて、俺は職員室に戻るけど、お前らはどーすんだ」

横尾先生に聞かれて、沙耶は答えていた。だって、崎谷先生と約束したんだから。

「崎谷先生に、試合の結果、お知らせしようかなって」

隣に居た芽衣にどうするかと尋ねたら、沙耶に付き合ってくれるというので、三人で職員室に向かった。横尾先生はそのまま職員室横の入口から入っていって、沙耶と芽衣は昇降口から上履きに履き替えて職員室へ向かった。

「失礼します」

扉を開けて礼をすると、近くに居た先生達が、一瞬こちらを見て、そのまままた仕事に戻る。部屋の真ん中までは声が届かなかったようで、やっぱり崎谷先生は机に向かったままだ。机と机の間を、芽衣と一緒に先生の方へ歩いていく。

「先生」

声を掛けると、やっぱり漸く気がついてくれたように崎谷先生が顔を上げた。おお、なんて言って、眼鏡越しに微笑う。

「どうだった、試合」

「優斗たちが勝ちました。…えーと、18対15です」

「そーか。結構接戦だったな」

にこにこと嬉しそうにしているのは、やっぱり担任を持った生徒が活躍したのが嬉しいんだろう。

「…あの」

沙耶は躊躇いがちに先生に声を掛けた。こんなこと、聞いてどうするって訳でもないのだけど。