「あっ、沙耶」

「芽衣ちゃん」

長身の友人は、去年一緒のクラスだった永山芽衣だった。明朗快活な彼女は長い腕を思いっきり伸ばして、ぶんぶんと手を振ってきた。

「どーしたの、そのプリント」

芽衣は沙耶と優斗の傍まで寄ると、沙耶たちが持っていたプリントを見て言った。

「世界史のプリントなの。来週小テストするって、横尾先生が」

「え、ホント? じゃあ、私たちも今度の授業で、それ、貰うのかなあ」

「多分、そうだと思うわ。テストもあるんじゃないかな?」

沙耶が言うと、芽衣が「ええー」と嫌そうな顔をした。全く、「テスト」という響きは、気分を萎えさせるものだ。

「折角あと二日頑張ったら週末だって思ってたのになあ。テストがあるんじゃ、楽しくないよ」

「全くだよ」

芽衣の不満に優斗が思いっきり同意する。優斗が持っていたプリントを芽衣に見せて、こんなに覚えることがあるんだ、なんて訴えている。勿論、芽衣の顔がますます嫌ぁな顔になった。

「じゃあさ。芽衣ちゃんも一緒に、日曜日の優斗の練習試合、応援に来ない? 優斗、レギュラー取ったんだって」

「へえー。優斗くん、出るの? じゃあ、私も折角だから応援に来ようかな」

「ホント? 嬉しいなあ。やっぱり、応援はあった方が気分の盛り上がりが違うからね」

優斗が嬉しそうに笑って言うので、沙耶と芽衣は一緒に応援に来ることを約束した。一人で応援だと声も出ないかもしれないけれど、芽衣と一緒だったら思いっきり応援が出来そうだ。週明けの小テストはともかく、楽しい日曜日になりそうだった。