長い長い1日がやっと終わった。
朝、ホリタくんと帰る約束をしたのが遠い昔のことのように感じる。
「お待たせ。」
学ランを着たホリタくんが来た。
「全然待ってないよ。帰ろっか。」
そういい、2人は歩き出した。
しばらくの沈黙の後、
「噂で聞いたんだけど」
そう口を開いたホリタくん。
まさか、
「音楽でやらかしたらしいじゃん。」
とても笑顔で言ってくるホリタくん。
今更になってあんなことやらなきゃ良かったと後悔した。
「なんか、イライラしちゃって…。」
「何かあったの?」
ホリタくんになら相談してもいいかなと思った。
でも、ハルノのことを愚痴ると言っても、ぶーちゃんの教員人生までかかっている。
まだホリタくんのことをほとんど知らないのにこんなこと言っていいのだろうか。
「ううん、天気のせいかな。」
適当に返してしまった。
「晴れてるとイライラするんだ。変わってるね。」
全てお見通しですよとでも言わんばかりのニヤッとした顔で言ってきた。
「まぁ、言いたくないこともあるだろうし、無理に言わなくていいよ。でも、言いたくなったらいつでも相談してね。」
こんなにいい人と私は一緒に歩いていいのか、とまで考えるほどいい人だなと思った。
「うん、ありがと。」
「突然だけど変なこと聞いてもいい?」
「うん。」
「なんかね、噂なんだけど、」
少し小声になってホリタくんは話し出した。
「ぶーちゃんってこの生徒と付き合ってるっていう噂があるんだけど、知ってる?」
いい人なのか、いい人ぶってるのか、一瞬で分からなくなった。
ただ単に情報集めがしたいだけなのか。
「初めて聞いた。誰に聞いたの?」
「誰だったかな、色んなやつが言ってるから、たくさんの人に聞いたかな。」
隠しているつもりでもどこからか情報は漏れるのか。
「でも、真面目そうなぶーちゃんだし、そんなことないでしょ。デマを信じてると、痛い人だと思われちゃうよ。」
笑いながら返した。
「それが、目撃情報があるんだって。うちの制服を着た女子生徒と手を繋いで歩いてたとか。」
待って、それはハルノじゃない。
ハルノはお互いのためにデートはしないと決めている。
「それは絶対ない!」
つい、言ってしまった。
「なんで?」
不思議そうな顔をしているホリタくん。
「な、なんとなく…」
「なんか知ってるでしょ?」
そう聞いてくるホリタくん。
「知らないし、人の恋愛の話とか興味無い。」
素っ気なく返してしまった。
「そっか。」
ホリタくんはただ一言そう呟いて、あとは無言だった。