教室に着くと、いつものようにカバンを下ろして、ハルノとおしゃべりしながら支度をした。
鐘が鳴って、先生が入ってくると、
「今日席替えをする。」
といきなり言い出した。
「やったー!」
という声もあれば、
「えーー!」
も言う声もある。
私は、
「えーー!」
派だった。
ハルノとせっかく隣だったのに、離れるのは嫌だ。
隣を見ると、ハルノは泣いていた。
「なんで泣いてるのよ。」
私は聞くと、
「離れるのやだもん。」
と返した。
なんていい人だ。
「そんなことで泣かないの。いつも話してるしいいじゃん。」
少し笑いながら言うと、
「だって…これからホリタくんと帰る日が増えたら話す時間減っちゃうじゃん。」
涙をハンカチで拭きながら、言った。
「帰るのは今日だけだって。ハルノをちゃんと優先するから。」
そう言いながらハルノの背中を撫でた。
「そうだよ。うちはちゃんと彼氏優先にしてないんだからね。」
そう言ってやっと泣き止んだ。

席順にクジを引き、適当に振られた席番号と自分のクジに書かれた番号が一致しているところが次の席だ。
私のクラスでは、席番号がランダムに振られているので、番号が続いているからと言って席が隣だとは限らない。
「ハルノは何番?私、25。」
「うちは23。」
「なんか続いてもないし、離れてるわけでもないから微妙な感じだよね。」
「それね。」
みんながクジを引き終わったところで、先生が黒板に席番号が書かれた紙を張り出した。
「ここからじゃ見えないね。」
「うん。休み時間に見に行こ。」
「席は、帰りに移動だ。それまでに確認して、移動しやすいようにしとけよ。」
そう言って、先生は職員室へ戻って行った。
「今見に行こ。」
そう言って、私とハルノは立ち上がった。
「また、離れちゃったよ〜。」
黒板の前に行くと、席番号を見ていた他の女子達が話しかけてきた。
クラスでは割と中心人物な私は、隣になった女子は結構喜ぶ。
最近はずっとハルノといるから、中にはハルノに嫉妬して悪口を言っている子もいるみたいだ。
そういう子とは、仲良くするつもりは無い。
どうして私はみんなに合わせないといけないのか、自分がいたい人といればいいじゃんか。
そんなことを思いながら、席番号を見た。
「ハルノぉぉ〜!」
そう私が言うと、ハルノはまた泣き出した。
今度は嬉し涙。
多分。
「やった〜!!」
そう言って2人で黒板の前で抱き合った。
また隣だった。
しかも1番後ろの席。
超特等席だ。
「さっき泣いたぶんの涙返して〜。」
ハルノはテンションが凄く上がっていた。
「2人とも凄いね。運命じゃん。」
そう言ってきたのは、同じクラスの、リンカ。
嫉妬して悪口を言っている人の1人。
「私も隣が良かったな。せめて近くが良かった。」
そう言って私に抱きついてきた。
「私もリンカの近くが良かったな。」
そう適当に返すと、
「ハルノはいいよね。授業中もずっと話せて。」
会話の矛先はハルノ。
「リンカ、嫉妬してるでしょ〜。」
ハルノが返事をする前に私はそう言って、リンカのお腹をつついた。
「くすぐったいなぁ。やめてよ〜笑」
そう言いながらリンカはやり返してきた。
そうこうじゃれあってるうちに、授業開始のチャイムが鳴った。
「次の席替えは近くなれるといいね。」
そう、社交辞令的にいうと、
「そうだね!帰りに神社でお願いしてくる。」
と、返してきた。
「ありがとう。」
とだけ返して私とハルノは席に着いた。