夕飯を済ませて、お風呂も済ませてまた部屋に戻った。
部屋に戻っても何もやる気が出なかったから、しばらく使われていなかったラジオに手を伸ばした。
リスニングの勉強の時にCDを入れたいからと、親に買ってもらった。
CDプレイヤーとしてしか使っていなかったけれど、初めてつけてみようと思った。
ラジオをつけると、真面目なニュースを低い声のアナウンサーが読み上げている。
チャンネルを変えると、演歌の特集だろうか。
ゆっくりとしていて、ハッキリとした歌声が響き渡った。
また、チャンネルを変える。
「次はお悩み相談のコーナーです。」
さっきまでよりも20歳くらい若そうなお兄さんの声。
「最初のお悩みは、東京都高校2年生のいつも眠いさん。」
なんてひどい名前だ。
もう少しマシな名前でも良かったんじゃないかな。
「私は小学校1年生の時から、ずっと好きな子がいます。その子は幼なじみで家も隣で学校も今までずっと一緒で、家族ぐるみで仲がいいので、勝手にお互いの家に入って夕飯を食べるくらい仲がいいです。でも、彼は私のことを好きな人ではなく、兄妹のように扱ってきます。2ヶ月私の方が産まれるのが遅かっただけです。どうやって、彼の中で妹から女にかわれますか。というお悩みですね。」
わざとっぽく、あえてお悩みというお兄さん。
そんなことよりも私は、小学一年生から、好きな人がいるいつも眠いさんに驚いてしまった。
「私なんて初恋中学生だぞ。」
そう、ラジオに向かって言ってみた。
私もお悩み相談してみようかな。
どうやって送るんだろう。
私はスマホでラジオの番組名を調べた。
どうやらその番組のホームページから、お悩み相談できるらしい。
私はお悩み相談を送った。
送ると、
『今日のお悩み相談の募集は終了しました。送っていただいたお悩みは明日以降の放送で紹介いただきます。』
というメッセージ。
わざわざお悩みなんて。
悩みでいいじゃん。
「お疲れ様です。」
半分やけくそになってスマホに向かって呟いた。
最近独り言が多いな。


スマホの通知で目を覚ました。
どうやら、お悩みを送ってからそのまま寝てしまったらしい。
「今何時…」
スマホの画面を見ると、
『3:12』
こんな時間に誰。
見ると、一気に目を覚ました。
「ホリタくんだ…!」
また独り言。
友だちがいない人みたいだ。
》僕が悪いんだから謝らないで〜。これからもよろしくね。
どうしてこんなに遅い時間に送ってきたのかな。
そればかり気になって、
》まだ起きてるの?
そう返した。
今度は直ぐに返信が来た。
》部活で疲れて帰ったら寝てて今起きた。
》そうなんだ。私もそんな感じだよ笑
》月曜日の学校ってなんか疲れるよね。
》そうだね。
そう私が返すとそれから返信はなかった。
返しにくい感じで返してしまったようだ。
まぁいいか。
途切れたなら途切れたで気にしなくて済むから。
ベッドから降りて、部屋の窓を開けた。
窓から顔を出すと、沈みかけた三日月が雲の間から覗いていた。
少しひんやりとした風が寝起きの私の目を覚ますのにちょうどいいような感じがした。