ハルノの大きなカミングアウトから2日。
私のクラスでぶーちゃんの授業があった。
その事実を知ってしまった以上、ぶーちゃんを普通の先生としてみることが出来ない。
そもそも授業に集中できない。
確かに、言われてみれば、ぶーちゃんの授業の時はハルノは妙にテンションが上がっている気がした。
「この問題わかる人?」
と、ぶーちゃんが言うと、めったに発言をしないハルノが、
「はーい。」
と手を挙げて、
「じゃあハルノ。」
と、わざとっぽく手のひらでハルノを指すぶーちゃん。
やっぱり集中できない。
でも、眠くもならない。
いいのか悪いのか。
でもハルノが楽しそうだから良かったな。
心の底からそう思った。
そして、ハルノからカミングアウトされてから、2日間、ずっと考え続けて私もハルノに自分の事を全部包み隠さずに話そうと決心した。

放課後、
「今日一緒に帰れる?」
と、ハルノに言ってみた。
「いつも一緒に帰ってるのにいきなりどうした。」
と笑って返された。
まぁ、確かに。
逆に重い空気になっちゃうね。
「たまには誘ってあげようと思って。」
私はからかうようにしてハルノに言ったけど、実際私の心の中では緊張しかなかった。

「あのね、」
私はちょっと重い感じで切り出してみた。
「うん。」
ハルノも真剣な顔をして聞いてくれた。
「ハルノにずっと言おうと思ってて、でも、信じてもらえるか分からなくて怖くて迷ってたんだけど、」
「うん。」
「私多分男性恐怖症なんだ。」
「何それ。」
まぁそう来るよな。
「全然怖いとは思わないんだけどね、少しでも男性に触れると吐き気が止まらなくて、その時着てた服とか捨てちゃうくらい気持ち悪くなるの。」
「なにそれ。」
ハルノは困惑してる様子だ。
「だからほら、吐き気止めいつもこんなに持ってて、どうしても触れないといけない時はその前にこれを飲むと気持ち悪くならないの。ほら、前に授業中に神田くんを起こしたでしょ?その時とか。」
そう言って、私は薬の入ったポーチを出した。
別に信じてもらえなくてもいいけど、嘘つきって言われて馬鹿にされるのは嫌だったから、言った以上信じてもらわなきゃと思って私はその時必死だったと思う。
「でも、中学の時彼氏いたよね?」
「うん。でもそれが原因で好きじゃないって思われて振られてる。」
「そうか。正直私にはその気持ちわからないけど、辛かったよね。」
そう言ってハルノは頭を撫でてくれた。
元カレに撫でられた時とは全然違う感触。
頭を撫でられるってこんなに嬉しいことなんだ。
そう思うと涙が止まらなかった。
「ありがとう。」
そう言いながらずっと泣いてた私にハルノは、
「辛かったね…」
ただその一言。
でもその一言でどれだけ私が救われたか。
きっと私はこのことを誰にも言えなくて、1人で恋人に責められて、捨てられて、すごく辛かったんだと思う。
でも私にはハルノがいる。
だから大丈夫。
そう思えた気がした。