結局その日は考えてもそもそも原因がわかっている訳では無いから時間の無駄だという結論を勝手につけて寝てしまった。
私は寝ると全てがどうでもなるタイプで、その次の日も昨日ずっと考えていたことはすっかりどうでも良くなっていた。
いつも通り支度をしていつも通りハルノと学校に行く、そんないつも通りの1日が始まった。
「今日はいつも通りだね。」
昨日テンションが低かった私にハルノは嬉しそうに言った。
「そうだね。昨日は寝不足だったみたい。」
考え事をしてた、なんて言うとハルノはまたしつこく聞いてくるだろうから軽い嘘で流しておいた。
「寝ないから小さいんだよ。」
そうハルノは言ってきたが、実際は1、2cmくらいしか変わらない。
「いや、昔はちゃんと寝てたから。8時に寝て、7時に起きる子どもだったから。」
そう言って私は背伸びをした。
身長はそんなに低い訳では無いが高い訳でもないから、たまに小さいねとか、自分より背が高い人にからかわれるが、その度にとりあえず背伸びをしておく。
そんないつも通りの会話をハルノとしながら廊下を歩いていると、向こうからホリタくんが歩いてきた。
お互い特に用はなかったが、すれ違いざまに目があい、
「おはよう。」
そうホリタくんが言ってきてくれた。
「おはよう。」
私も同じように返しておいた。
「昨日カバン届けてくれただけなのに挨拶する仲になってるの?展開早すぎ。もう両思いじゃん。」
そう言っていつも通りテンションが上がるハルノ。
「じゃあ、たまたますれ違ったぶーちゃんが挨拶してきて返しても両思いになるんだ?」
ぶーちゃんとは社会の先生のこと。
太っているからぶーちゃんの呼ばれている。
「いや、それとこれとはちがうしっ!」
そう言ってハルノは黙り込んだ。
「ごめんごめん。冗談冗談。」
そう言って私は笑いながら謝った。
「あのね、聞いて欲しいことがあるの。」
そう言ってハルノは真面目な顔をして私を見た。
「なに?」
私も真面目な顔をしてハルノを見た。
「うちね…本当に誰にも言っちゃダメなんだけど、ぶーちゃんと付き合ってる。」
一瞬何を言っているかわからなかった。
「いや、それ犯罪だろ。」
私、急なマジレス。
「だから、誰にも言っちゃダメなの。」
「いや、わかるけど。ぶーちゃんブスじゃん。なんで?」
「うち、ちゃんと中身見る人になったから!」
そう言って真面目な顔をしていたハルノは笑顔になってピースをした。
「確かにぶーちゃん優しいもんね。」
「私の前でぶーちゃんって呼ばないで!怒るぞ!」
笑いながらほっぺを膨らませるハルノ。
「普段なんて呼んでるの?」
私はもう興味津々。
「デートはバレちゃいけないからまだしてないんだけど、メールでははるくん。」
「ブーっっ。はるくん?爆笑」
そう言って私はそこでお腹を抱えて笑ってしまった。
その前で照れたように頭をかくハルノ。
こんなに失礼なことしても怒らないあたりハルノは本当に優しい子だ。
「バレたらぶーちゃんも先生出来なくなるし、私も先生としてはぶーちゃん好きだしいなくなると悲しいから黙っててあげる。」
笑いながら私はハルノに言った。
「約束だよ?ほんとに!」
「わかったわかった。別れたら教えてね。人の不幸は蜜の味〜」
そう言いながら私はハルノより先に歩き出した。
性格がいいハルノとは真逆の私。
本当にでこぼこコンビだな。
そう1人で思いながら歩いた。
「待ってー。」
ハルノはそう言って追いかけてきた。