朝の会が終わると、私はハルノとトイレに行った。
トイレから帰る途中に、
「あの─」
聞いたことがない声。
そして男子。
「ん?」
そう振り返ると、そこにはホリタくんが立っていた。
昨日、ユニホーム姿に見とれてしまったためか、なんだ勝手にかぎこちない気がする。
「なんでしょうか?」
冷静を装ってそう答える私の隣でニヤニヤするハルノ。
「うち、先教室行ってるね。」
そう言って走って言ってしまった。
「これ、朝ぶつかった時に忘れていきましたよね?」
そう言ってホリタくんが差し出したのは私のカバン。
「えっ、あっ、ありがとうございます。」
あっ、朝ぶつかったのはホリタくんだったんだ。
なんか嬉しいような申し訳ないような複雑な感情が芽生える。
「いや、朝ぶつかっちゃってすいませんでした。」
そう言って頭を下げるホリタくん。
「いや、私こそ前見てなくてごめんなさい。」
私も頭を下げた。
お互い交互に謝り続け、もうすぐ授業が始まるからと、そこで別れた。
イケメンホリタくんと話せたなんてうかれながら始まった1時間目。
朝の出来事を頭の中でずっと繰り返していた。
その時、
(私、ホリタくんとぶつかったんだよね?あれ、気持ち悪くならない。)
そう思った。
普段なら服を今すぐ変えたいくらいの衝動に駆られるはずなのに、おかしいな。
そう思いながら1時間目が終わった。

その日1日はずっとその事を考えていた。
「…い。おーい。」
帰り、私より早く支度が終わったハルノは支度もせずに隣でぼーっと座っている私の目の前で手を振りながら呼んできた。
「どうした?」
「どうした?じゃないよ。もう帰る時間だよ。」
そう言って教室にある時計を指さした。
時計は4時をすぎていた。
そこでふと我に返る。
「あっ、ごめんごめん。帰ろ。」
そう言いながら私も支度を終わらせた。
昇降口から出ると、目の前の運動場で部活をしているサッカー部。
そこで足を止める私。
「またホリタくん見てるの?てか、さっき何話してたの?」
お決まりのニヤニヤで声をかけてくるハルノ。
「カバン落としてて拾ってくれたみたい。ただそれだけ…」
そう言って1人で歩き出した。
「今日テンション低くない?なんかあった?」
そう不思議そうな顔をしながら追いかけてくるハルノ。
「そんなことないよ。いつも通り!」
そう言って私は無理にテンションを上げた。
家に着いてからも頭の中はどうしてホリタくんとぶつかった時は吐き気とかしなかったのかということばかりだった。