中学2年生の夏。
私に初めての彼氏ができた。
初めてでどうするものかよくわからなかったけど、自分が思うままに今まで通りにして、相手のペースで一緒に過ごしていこうと思った。
そんな青春の始まり。
でも、3週間もしないうちに振られた。
原因は明確。
恋愛に対する価値観の違い。―――

私は、付き合ったら、ずっと一緒にいれればいい、そう思っていた。
でも相手は違った。
付き合って1週間もしないある朝、一緒に登校していると、突然彼は立ち止まって言った。
「手繋がない?」
その時正直気持ち悪いと思った。
それは決して彼のことが実は嫌いだったとかではない。
手を繋ぐ、その行為に対して気持ち悪いと思ってしまったのだ。
「それ、今じゃなきゃダメ?」
無意識にそんなふうに返してしまっていた。
しょんぼりした彼の顔を見てはっと我に返り慌てて付け足した。
「昨日ころんじゃって、手を捻挫しちゃったの。痛いから今日はごめんね。」

もちろん嘘。
手を繋ぎたくないは故にとっさについてしまった初めての嘘。
「あぁ、そうだったんだ。お大事にね。」
こんな優しい人にとっさに嘘をついてしまった自分が憎らしい。

そんなこんなでまた1週間くらい経った。
一緒に下校している途中彼はまた、
「手繋がない?」
と聞いてきた。
「ごめん、昨日料理してたら包丁で指切っちゃって…」
こんなに連続で怪我するなんて不自然すぎる。
もちろん今回も嘘。
「料理してるなんて偉いね。」
彼はそう言って頭を撫でてきた。
でも、その瞬間私は激しい吐き気に見舞われた。
「うゔっ…」
呻き声をあげてその場にうずくまった私に彼は驚いた様子で
「どうしたっ?」
と、顔を覗き込んできた。
幸い、ブツが出ることなく吐き気は収まった。
「昨日一睡もしてなくて、寝不足だからかな。今日はもう帰るね。ごめん。」
そう言って私は駆け足でその場を離れた。

家に着くとすぐに荷物を下ろして服を脱ぎ、浴室へ入った。
頭を念入りに流し、いつもより倍くらいのシャンプーを手に乗せて頭で泡立てていった。
これを3回繰り返した。
ついでに身体を洗い、シャワーで流し、タオルで吹いてパジャマを着て、家族に
「ただいま。」と言ってリビングに入った。