誰よりも近くで笑顔が見たい

「蓮、そろそろ行くぞ!」


いつの間にか、杉本くんも近くにいて、上原くんに声をかける。


「おう!じゃあ、それ、絶対かぶっててください」


念を押すように言われて、頷く。


「がんばって、ね」


そう言うと、上原くんは片手を上げて私たちから去っていった。


「その帽子、よかったね」


「うん」


私は、ポニーテールを帽子に通してかぶりなおした。


日差しも遮られて、少しだけ涼しい。


「よし、蘭、行こう」


そう言われて、私たちも歩き出した。


観客席は、人が多くて私は帽子を深くかぶりなおした。


なんとか席を確保して安心していると、前の人たちの話し声が耳に入る。


「ねえ、やっぱり応援するのって上原くんだよね?」


「もちろん。中学の時から人気だもんね。でも、彼女できたって噂でしょ?」