「いやいや、頭上げて?僕が勝手に待ってたんだから」

それより、と蘭の前に手が差し出される。蘭が恐る恐る自身の手を重ねるとギュッと包まれた。

「リビングに行くまでこうしていていい?」

ニコリと頰を赤くしながら微笑む星夜に対し、蘭はゆっくりと頷く。少し触れただけでも胸が高鳴ってしまう。

「星夜さんがお望みなら……」

こうして、二人の一日がまた始まるのだ。



朝食を食べた後は、世界法医学研究所に車で出勤する。そして部屋に入って仕事仲間に挨拶をするのだ。

「おっはよ〜!蘭!」

元気よくドイツ人監察医のゼルダ・ゾルヴィッグが蘭に抱きついてくる。星夜が慌てて蘭を支えるが、訓練を積んでいる蘭はこれくらいのことでは体勢を崩したりはしない。

「ゼルダ、蘭が潰れる」

星夜と誰かの声が重なる。スウェーデン人監察医のマルティン・スカルスガルドだ。呆れたように微笑んでいる。

「蘭ちゃん、今日も可愛いね」