その答えは恋文で


 教室に近付くに連れて、誰かの話し声が廊下に響き渡る。おそらく二者面談を終えた生徒や待っている生徒が残っているのだろう。

 がやがやがやがや、一際騒がしい話し声はどうやらうちのクラスから聞こえてくるようだった。なんだか中に入りづらい。こんな時に限って扉はしっかりと閉まっているので余計に入りづらい。

「てかさー進路相談とかぶっちゃけ早くね? 俺らまだ二年なのにさー」
「もうすぐ三年だけどな」
「いやでもさぁ!! 受験なんてまだ先じゃん? もうちょっと余裕あんじゃん?」
「うわお前それ中学ん時も言ってたじゃん全然成長してねー!」
「うっせーよ! ギリギリでもちゃんと受かったんだからいいだろ!」

 ……なんだろう。似たような会話をさっきもしたような気がする。

「受験かーなんか懐かしいなー」
「お前なんでここ受けたの?」
「俺? 家から近いから」
「適当だな!」
「そういうお前はどうなんだよ?」
「女子の制服が可愛いからに決まってんだろ!」
「動機が不純!」
「そういうお前は?」
「行きたい大学への進学率が高かったから」
「真面目か!」

 彼らのツッコミスキルが無駄に高くて、私は驚きを隠せない。……いや、それはさておき。この様子を見るとまだ話は終わりそうもなかった。どうしよう、これ以上彰くんを待たせるわけにもいかないし……さっと入ってさっと出れば差し障りはないだろうか。

「そういやさぁ、平岡ってなんでこの学校に来たんだろうな?」
「あーそれ思った。頭超いいのにな」
「な。行きたいとこ選び放題じゃん。なのになんでここ? 超フツーの、しかも公立高校ですけど」

 突然、彼らの口から彰くんの名前が出てきたので私の心臓がとび跳ねた。びっくりするから不意打ちはやめてほしい。真剣に。

「推薦蹴ってきたとか噂あったけどあれマジなの? だとしたらマジ意味わかんねーんだけど」
「ああそれガチッぽいよ。本人から聞いたっつってた奴いたからたぶんガチ」
「マジ? うわーますます意味わかんねー!」
「なになに? お前ら知らねーの?」

 彼らの中の一人が、やけに得意気な口調で言った。その顔はドヤ顔なのだろうと簡単に想像がつく。誰なのかは知らないが。

「なんだよ偉そうに。お前何か知ってんの?」
「そりゃな! 俺平岡と同じ中学だし!」
「プチ自慢はいいから早く話せよ」
「はははははー! 聞いて驚くがいい!」

 周りからの早くしろよ! という野次も気にせず、彼はもったいぶるようにたっぷりと間を開けたあと、高らかに言い放った。