その答えは恋文で


「おつかれー」

 そのまま図書室に向かうと、カウンターの奥に座った由香が我が物顔でポッキーを食べていた。ポリポリという場違いな音が小さく響く。私が言うのも何だけど、彼女は図書室を私物化しすぎである。

「進路指導どうだった?」
「担任が暑苦しい」
「ああ、わかる」

 私も由香の隣に座ってポッキーの袋に手を伸ばす。が、その手はパシリと勢い良く払われた。…………ケチ。

 十七歳。セブンティーン。

 その年齢はまさに今の私達そのもの。青春の代名詞とも呼べるこの数字は、やはりどこか特別な数字なのだろうか。これからの長い人生を左右するほどに? 考えられない。

「こんなに若いうちから将来について考えるなんて馬鹿げてると思うんだけど」
「アンタそれ中学の時も言ってなかった?」
「……そうだっけ」
「そうだよ。受験するちょっと前ぐらいから飽きるほど聞かされた」

 という事は私の思考は中学生の頃から成長していないという事だろうか。それはそれで悲しい。

「そのわりに受験する時は気合い入れちゃってさぁ。なんてったっけ? わざわざ学業の神様が祀られてるっていう有名な神社にお参りしに行ってなかった?」

 由香のようにさっさと推薦で入学を決めた輩には分かるまい。受験生特有のあのピリピリした空気。藁だろうがなんだろうがすがれるものにはすがりたくなるあの気持ち。

「……だって落ちるの嫌だったし」
「だからってわざわざ片道四時間かけて行くぅ? 神様なんて不確かなものに頼って遠出してる暇があるならその分勉強しろって話よね」

 由香の正論がぐさぐさと胸に突き刺さる。

「オマケに受験によく効くって噂の高いお守り二、三個買ってさぁ。ぶっちゃけあれってぼったくりじゃないの? ホントに効果あったわけ?」

 由香に追い打ちをかけられ私の気分はどんどん沈んでいく。実際私は受験に受かったわけだし、一応効果はあったと思うんだけど。それに……ふと脳裏を(よぎ)った、真っ黒い背中。

「……あの高いお守りさ、意外と役にたったんだよね」
「合格したもんね。アンタ神様に感謝しなきゃこれから生きてけないわよ」
「いやそうじゃなくて」
「じゃあ何よ?」

 ──私の記憶は受験の日まで遡る。