「すいませ~ん! 受付のお姉さんとは写真撮れないんですかぁ~?」
聞き覚えのあるイラッとする口調に自然と眉間にシワが寄った。もはやこれは条件反射のようなものだ。私は俯いたまま大きな溜息を吐き出す。
「撮れません」
「え~? 指名料払っても?」
「無理です」
「もうっ! 栞里ちゃんのケチ! ていうか何そのネコ耳超絶可愛いんですけど!! 似合いすぎて尊い! さすが孤高の文学美少女!」
「ちょっと! 何言っ……」
文句を言うために開けた口がそのまま塞がらなくなった。白いシャツを第三ボタンまで開けてはらりと肌をさらけ出し、黒のジャケットにズボン、片手に薔薇の花を抱えてキメ顔をしている塚本くんの姿があったからだ。……なんだ、これ。なんの冗談?
「……えっと、塚本くんのその格好は一体……?」
「ああこれ? うちのクラスホストクラブ喫茶やってんだよね。だからスーツなの。どう? オレ似合ってるっしょ?」
あまりにも似合いすぎていて思わず吹き出した。コミュ力高めのチャラさといい、スーツを着こなす容姿といい……ホストクラブなんて塚本くんの天職じゃないか。ていうかよく学校が許可出したよね。
「どうも。ホストクラブ喫茶SHINE、ナンバーワンのLeoです」
どうやら本人も随分と乗り気らしい。自分の名前を源氏名っぽく言ってるところが腹立たしかったが、様になっているのは確かだった。
「それにしてもこの行列。彰王子の人気はすごいねぇ」
「そうだね」
「妬かないの?」
「……なんで私が」
「またまたぁ。分かってるくせに」
塚本くんの瞳が意地悪く細められる。これだからこの男は苦手だ。
「ははっ。これあげるからそんなに怒んないでよ」
塚本くんは笑いながら、机の上にピンクのリボンがかかったクッキーの袋を置いた。
「え、これ」
「喫茶店のメニューの一つだから。俺たちの愛がこもった特製愛クッキー。あ、作ったのは家庭科部の女子たちだから美味しいよ?」
「……ありがとう」
ネーミングセンスはさておき、お昼の休憩も取れないほどの忙しさだったので正直これは助かった。ちょうど糖分が欲しかった所だし。
「あ、お礼は栞里ちゃんと俺のツーショット写真でいいから」
「…………これ返すね」
「うそうそ冗談だから! 安心して受け取って!」
まったく。塚本くんはこれがなければ良い人なのに。

