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はっきり言おう。うちの店は大当たりだった。
一般公開の開始直後から出来た長蛇の列。それは間違いなく彰王子のせいだった。
クラスの誰かが王子様の格好をした彰くんの写真を大量印刷し「このイケメン王子様と写真撮影が出来るのはコスプレ体験館A-styleだけ! 虹ヶ丘高校文化祭へお越しの際は是非二年A組へどうぞ!!」という内容のチラシを校門で来客者に配りまくったのだ。
更に、うちの店で写真を撮った女子が人気のSNSサイトに「ガチ王子とツーショットヤバイ」と写真付きで投稿した結果、大量の「いいね」ボタンが押され……。
その結果が、この尋常じゃないほどの行列である。
お陰でシンデレラコーナーだけでなく、各コーナーにも人が集まり大忙しだった。楽だと思っていた受付係の私までてんてこまいだ。
比喩的な表現ではなく、本当に猫の手も借りたいほど忙しい。
オマケに、並んでいる客は暇つぶしに私に色々と話を振ってくる。先ほども「A-style」という名前の由来について聞かれたため、私は不得意な愛想笑いを浮かべながら適当に説明をした。
……ちなみにうちの店の名前の由来は「A組の格好」をちょっとカッコつけて言ってみただけのまったく捻りもセンスの欠片もないものである。Aコスプレじゃなんか変だし、じゃあスタイルで良くない? というその場の流れで決定したのだ。
ついでに、必ずと言っていいほどツッコまれるこの黒い猫耳については聞こえない振りで鬼スルーを決めこんできた。というか、この黒歴史に触れられてキレなかったことを褒めていただきたい。
教室の中からはきゃあきゃあと騒ぐ女の子の黄色い声や、子供たちの楽しそうな笑い声、オマケに美女を前にテンションの上がった野郎の野太い声が聞こえてくる。
ピコン、と手元のスマホが音を立てた。それはシンデレラコーナーのリーダーからで、彰王子との写真撮影は二時間待ちになるとお客さんに伝えてほしい、というメッセージだった。二時間待ちって……遊園地の人気アトラクションや、アイドルグループコンサートの物販レベルの待ち時間じゃないか。
その状況にドン引きしながらも、私は了解という二文字を送った。私は拡声器のスイッチを押して口元まで持ってくる。
「え~。ただ今、シンデレラコーナーが大変混み合っております。王子との写真撮影にはあと二時間ほどお時間を頂くということです。お客様には大変申し訳ございませんが、整理券を配布致しますのでご協力の方どうかよろしくお願い申し上げます」
長蛇の列に向かって告げると、えーという不満気な声が聞こえてきた。えーはこっちの台詞じゃボケェ、という言葉をなんとか飲み込む。そろそろ、無理やり上げていた私の表情筋が限界を迎えそうだ。

