その答えは恋文で


「……カチューシャ?」

 それは普通のカチューシャじゃない。三角形のもふもふした耳がついた、猫耳カチューシャだった。木村さんはその黒い猫耳カチューシャを更に私に近付けて力説した。

「これ! この猫耳カチューシャを付けて受付してほしいの!!」
「お断りします」
「そこをなんとか!!」
「嫌です」
「なんで!?」

 いや逆になんで? 私はただの受付だ。どうしてこんなものを付ける必要があるのか。

「成瀬さんがこれを付ければ更に売上が伸びるはずなの! 私の算段に間違いはないわ! 私今回の文化祭でクラス優勝目指してるの!! だからお願い!! これ付けて!! 」
「嫌だって。だいたい、受付はコスプレしなくてもいい係でしょ?」
「いやいや。そんなこと一言も言ってないよ? そもそもうちはコスプレ体験館だよ? 一人だけ何も着ないなんてそんなのおかしいじゃない! 店の顔とも言える受付係がなんのコスプレもしてないなんて明らかに変よ!!」

 ビシリと指をさされ叫ばれる。それは……確かにそうだ。みんながコスプレをして写真まで撮っているというのに、私一人だけ何の衣装も着ていないのは確かに筋が通っていない。

 木村さんと睨み合うように見つめ合う。……と、私は溜息をついてそのカチューシャを受け取った。

「付けてくれるの!?」
「……まぁ。それが役割なら」
「やった!! ありがとう成瀬さん!! これでうちのクラスの優勝は確実だわ!!」

 木村さんは嬉しそうに笑っている。それとは対照的に、私は苦虫を噛み潰したような顔で猫の耳が付いたカチューシャを頭に付けた。

 こんな姿、由香に見られたら何て言われるかわかったもんじゃない。

「あ、尻尾もあるんだけど付け、」
「付けません」
「デスヨネー」

 木村さんと話していると、校内放送を知らせるチャイムが鳴った。


『只今より、第二十四回、虹ヶ丘高校文化祭を開催致します』


 この放送を合図に、二日間の祭りが幕を開けた。