その答えは恋文で


「これ受付のマニュアル。使わないかもだけど一応読んどいて。明日は九時から受付宜しくね!」
「わかった」
「成瀬さんが座ってれば絶対客取れるから! 期待してるよ!」

 私は苦笑いで言った。

「残念だけどその期待には応えられないと思う」
「孤高の文学美少女が何言ってんのよ! 座ってるだけで男共が虫のように寄ってくるに決まってるじゃない! もちろん成瀬さん目当てでね!」

 ケラケラと笑いながら木村さんは私の背中をバシッと叩いた。久しぶりに聞いた不本意なあだ名に頭を抱えたくなる。

 ふと木村さんからの視線を感じて、私は顔を上げた。

「……成瀬さん、なんか雰囲気変わったね」
「……え?」
「あっ、悪い意味じゃないよ? なんか前は話し掛けにくいっていうか、近付かないでっていうオーラが凄くてさ。話したくても中々話せなかったから……。でも今は丸くなったっていうかやわらかくなったっていうか。それにほら、今回の準備の時も自分から手伝うとか言ってくれたじゃない? あれも意外でびっくりしたし……ってごめん。あたし何言ってるか分かんなくなってきた」

 私は驚きの表情で彼女を見ていた。

「木村ー! これどこに置けばいいのー?」
「あっ、今行くから待っててー! じゃあまたね、成瀬さん!」

 彼女は慌ただしく去っていった。……私と話したいとか、そんな風に思ってくれる子もいたのか。今まで面倒だと思って避けいたけれど、こうやって色々話してみるのも良いかもしれないな。

 彰王子は明日の本番を前に既に大忙しだった。シンデレラコーナーに作られた撮影スペースで、クラスの女子と次々に写真を撮っている。にこにこと笑みを絶やさないあたり慣れているというかなんというか。この調子だと明日はきっともっと忙しくなるのだろう。

 胸のあたりがモヤモヤしてきて、私は思わず顔をしかめた。

 どうしてこんな気持ちを抱くのか、自分が何故最近おかしいのか、本当は薄々感付いている。

 ただ、私がそれを認めたくないだけなのだ。だって、認めてしまったらもう後戻りは出来なくなる。このまま気付かない振りをして終わりの時をじっと待っていれば、それこそ傷付くことはない。結局私は自分を守りたいだけなのだ。

 溜息をついて鞄を掴むと、私は静かに教室を出て行った。