夏休みも明けて、あっという間に学校が始まった。始業式やら宿題の提出やらテストやらというハードスケジュールを、休みボケですっかり鈍くなった頭と体に鞭を打ちながらこなしているうちに、気付けば一週間が経っていた。

 学校生活は相変わらずだった。

 まぁ、女子からの嫌がらせや好奇な視線は少なくなったし、夏休み前よりも落ち着いた環境になったので、その点はこちらとしても過ごしやすくなって助かっている。でも、彰くんとは挨拶をする程度であまり話はしていない。なんとなく避けてしまうのだ。私が。

「何か意見はありませんか?」

 教壇に立った文化祭実行委員の言葉にクラス中がざわめく。本日最後の授業はホームルーム。議題は来月行われる文化祭についての話し合いだった。

「お化け屋敷!」
「たこ焼き! 焼きそば! かき氷!」
「お前それ祭り気分抜けてないだけだろ」
「ライブやろうぜ! オタ芸付きで!」
「じゃあメイド喫茶!」
「えー? メイド喫茶は定番過ぎない?」
「教室使って脱出ゲーム!」
「コスプレ撮影会!!」
「なにその趣味丸出し感! キモいんだけど!」

 今は、各クラスで主催する模擬店等の出し物についての話し合いが行われていた。

 だが、定番なものからマニアックなものまで、あちこちから意見が飛び交いまとまる様子はまったく見受けられない。私は別に何に決まっても構わないので、他人事のようにみんなの様子を眺めていた。決まるまで長引きそうだな、と小さく溜息をつく。

「でもさぁ!」

 散々文句を言われていた生徒が反論のため口を開いた。

「コスプレとはいえ好きな子と一緒に写真撮れるチャンスなんだぜ!? しかも正々堂々と!!」
「うわーお前下心見えすぎ!」
「あれ? てことはお前このクラスに好きな奴いんの? 誰だよ言えよ!」
「ばっ! ち、ちげーよ!!」

 彼の一言で、女子たちの目の色が変わった。

「はいはいはーいっ! 私コスプレ撮影会に一票!!」
「私もーっ!!」

 これはおそらく〝好きな人と写真が撮れる〟というフレーズに心を鷲掴みされたのだろう。二年A組の出し物は女子の圧倒的賛成多数でコスプレ撮影会に決まった。恋する女子の力って怖い。