「あれ? てか神田ちゃんは~?」
「トイレだって」
「……一人で? マジか。女の子の一人歩きは危ないなぁ……うん」
塚本くんは何か考えながらぶつぶつ独り言を言うと、急に顔を上げた。
「よし決めた! 迎えに行こう! って事で俺、神田ちゃんのこと探しに行ってくるね! 後の事はよろしく!」
かき氷を持ったまま、塚本くんは私達に向かってビシッと敬礼した。
「あー……じゃああたしも行くわ」
「えっ!? 由香ちゃんも来てくれるの! 嬉しいけど珍しい!」
「だってアンタ女子トイレ行けないでしょーが。入ったらただの変態チャラ男よ」
「あ! そっか!」
由香は塚本くんを睨み付けると、私を手招きして呼んだ。
「あたし達たぶん戻って来ないから」
「えっ?」
「今日はデートの邪魔しちゃったからね。せめて花火ぐらいは彰サマと二人で楽しみなさい」
私にだけ聞こえるようにそっと小声で話すと、由香は塚本くんを引っ張ってさっさと行ってしまった。……今さらそんな事言われても逆に困るんだけど。ていうか、由香が気を使うなんて珍しい。
「はい、これ」
青い字で『氷』と書かれた涼しげなカップが目の前に現れる。白い氷山の上には薄い黄緑色のシロップがたっぷりとかけられていた。私のお願いした青りんご味のかき氷だ。
「ありがと。お金出すよ。いくらだった?」
「いいのいいの。今日くらい大人しく奢られてよ。渡辺さんを見習ってさ」
いやいや。由香を手本にしてはいけないだろう。あれは相手を破産させてしまう。
「あの二人、神田の様子見に行ったんでしょ? どうする? 戻ってくるのここで待ってる?」
「あ、それなんだけどね」
「……それとも」
由香に言われたことを伝えようと口を開くが、彰くんの方が先に言葉を発した。
「えっ?」
──あっという間の出来事だった。

