「お前が神田と渡辺さんと一緒なんて、なんか意外な組合せだなぁ」
彰くんは心底意外そうな声で言った。
「まぁ両手に花ってやつ? どうだ羨ましいだろう!」
「ちょっと! 勝手な事言わないでよね!」
「はいはいスミマセン。あ、そうだ! ここで会ったのも何かの縁って事でさ、良かったら二人も俺らと一緒に回んない?」
最初からこれが目的だっただろうに。塚本くんは今思い付いた風を装って私達を誘い出す。白々しい。なんとも回りくどいやり方だ。
「いや、俺らは……」
「私は別に構わないけど?」
彰くんの言葉を遮って私は言い放った。驚いた顔で私を見る彰くんには悪いけど、今はこの方が得策だ。
「やったー! じゃあ決まり! どこから行こっかー?」
やたらと張り切り出した塚本くんはフードコートを出て歩き出す。鋭い視線から逃げるように、私は由香の隣に移動した。
皆で屋台を回りながらたこ焼きを食べたりくじを引いたり、思いのほか祭りを楽しんでいる自分がいた。私もこの雰囲気に当てられたのだろうか。お祭りが楽しいなんて思ったのは何年振りだろう。
「あ、射的やろうぜ!」
「どっちが多く取れるか勝負する?」
「乗った!!」
塚本くんがそう言うや否や、男子二人は何かに目覚めたのかやたらとムキになって景品の取り合いを始めてしまった。子供の喧嘩みたいで見てるこっちは楽しかったけれど、お店にとってはそうはいかないらしい。景品が次々に落とされてしまっては商売上がったりだ。おじさんの顔色がだんだん悪くなっていく。
結局、五回やって結果は十一個対十二個。わずか一個の差で彰くんの勝利となった。一回につき弾は五発だから、二人とも命中率は高く相当な腕前だ。聞けば、軽くて倒れやすいものを集中的に狙ったらしい。大人気ない。
二人は落とした景品の中から数個だけ選ぶと、あとはお店に返すことにしたらしい。これには店のおじさんも感謝していた。
「はい。これ栞里にあげる」
「え?」
彰くんの手にあるそれは、射的の景品の中で密かに可愛いな、と思っていたウサギのぬいぐるみだった。
「……いいの?」
「うん。なんか欲しそうにしてたし」
まさか気付かれていたとは。私は気恥ずかしさを隠すように、ふわふわの生地で作られた愛らしいぬいぐるみをぱっと受け取った。
「……ありがとう」
私がお礼を言えば、彰くんは照れたように笑った。

