「服、可愛いね。すごく似合ってる」

 彰くんはまじまじと私を見つめたあと、恥ずかし気もなく言った。

「実は俺栞里の浴衣姿楽しみにしてたんだけど、その服はその服で可愛いから満足だわ」
「……えっと、ありがとう?」
「浴衣は来年の楽しみにとっておくから。ちゃんと紺色の浴衣用意しといてね?」

 ただのリップサービスだと分かっていてもドキッとしてしまった。来年のこの時期には一緒にいないことぐらい、彰くんも分かっているというのに。

「じゃあ行こうか」
「うん」

 私達は虹ヶ丘通りの中へと歩き出した。歩行者天国となった道路の両脇には、沢山の出店が所狭しと並んでいる。ジュウジュウという鉄板の音や香ばしいソースの香りが食欲をそそる。せっかくだから何か食べようかなぁ。

「あっれれ~? そこに見えるは彰サマと栞里ちゃんではありませんかぁ? わぁ、ぐっうぜーん!」

 中に入って五分経っただろうか。ひょっこりと現れた金髪が大根役者もビックリするような棒読みの台詞を吐きながら私達の行く手を阻んだ。どう考えたって偶然ではない。

「え、塚本? お前何してんの?」
「もちろん祭りに来たに決まってんじゃん。浴衣女子ウォッチング!!」

 塚本くんは手に持っていたアメリカンドッグを魔法の杖のようにくるくると回す。

「え? ぼっち参戦で?」
「失礼な! ちゃんとお友達と来ましたよ! 残念ながら栞里ちゃんには断られちゃったからね!」

 彰くんが私にチラリと視線を寄越す。塚本くんが余計な事を言うからだ。

「ほら、ちゃんとあっちにいるよ。ボクの超絶可愛いおトモダチが!!」

 塚本くんのアメリカンドッグはフードコートを指し示す。その先に居た二人を見て、私は自分の目を疑った。