「彰くんとは付き合ってない。ただ付き合ってる振りをしてるだけ。理由は知らないけどあっちから言ってきたの。以上」
「短っ!! それいくらなんでも簡潔すぎじゃね!?」
そんな事言われたってこれ以上は説明の仕様がない。私が言ったことに間違いはないし。
「もっとこう……なんかないの?」
「ない」
「えええ……」
俺だけ超語っちゃったじゃん恥ずかしーとか、もうちょっと詳しく教えてくれてもいいじゃんか、なんてぶつぶつと文句を言っている塚本くんを尻目に、私は中断していた作業を再開させる。休憩時間はもう終わりだ。
「ああそうだ。栞里ちゃん、もう一つだけ言っても良い?」
「……今度は何?」
本棚と一覧表を交互に見ながら耳を傾ける。
「あのね、俺が栞里ちゃんの事好きだっていうのは嘘じゃないよ。恋愛感情云々は抜きにしてね」
「……へぇ。さっすが博愛主義者の塚本くん」
「うん。女の子限定だけどね」
私と塚本くんは顔を見合わせると、どちらからともなく噴き出した。
「栞里ちゃんお疲れさま! ごめんね、遅くなっちゃった」
笑いが落ち着いたちょうど良いタイミングで、小さな段ボール箱を抱えた翠先生が図書室に戻ってきた。
「本の補修グッズが中々見付からなくてさぁ。だいぶ手間取っちゃったわよ」
翠先生はカウンターに段ボール箱を置く。中に入っているのは本の補修に使う道具らしい。きっとテープや紐、接着剤などが入っているのだろう。
「やっほー翠ちゃん! お邪魔してまーっす」
「おーレオくん! いらっしゃーい」
まるで友達同士のように軽い挨拶を交わす。
「あ、そうだレオくんこのあと暇? もし暇だったら作業手伝ってくれない? 人手が足りなくて困ってるのよ」
「全然いいッスよ。翠センセと栞里ちゃんが一緒なら超やるし」
「本当!? じゃあこれ、本のリストね! 詳しいことは栞里ちゃんに教えてもらって! 私は本の修復するから!」
翠先生はてきぱきと指示を飛ばし、自らもすぐに動き出す。
「栞里ちゃん教えてー」
私と同じ一覧表を持って隣に来た塚本くんに作業のやり方を説明する。塚本くんは呑み込みが早くて、一階の説明でだいたい理解してくれた。
「他に分からないことがあったら聞いて」
「了解!」
元気よく返事をして、塚本くんは隣の棚に移動して行った。