その答えは恋文で






 地球温暖化の影響をもろに受けている日本国内は連日の猛暑日で茹だるような暑さだ。いや、茹だるなんて生やさしいものじゃない。焼け焦げるように熱い。バーベキューで熱々の鉄板に並べられた肉や野菜の気分を疑似体験しているような気分だ。いや、本当に。

 そんな中、私はクーラーの効いた室内で文庫本片手にチョコレートをつまむ。ああ、快適だ。

 サラリーマンのおじ様達が汗水垂らして仕事をしている最中、天国行きの切符を手に入れた私達学生は、宿題なんてものは最終日まで忘れて青春を謳歌する事に全力を尽くしていた。夏休み、所謂サマーバケーションである。なんて良い響きだろう。最高だ。

 そして、私がこうして快適な夏休みを過ごせているのはご存じの通り全て彰くんのお陰である。もう彼の家の方角に足を向けては寝られない。あ、家知らないけど。

 そんな幸せの空間に、滅多に鳴らないスマートフォンの着信音が響き渡った。画面には〝本屋〟の二文字。私は慌てて通話の表示をタップした。

「もしもし」
「あ、栞里ちゃん? あたしあたし!」
「……詐欺ならお断りですけど」
「あははっ、冗談じゃんかマジウケる!」

 典型的なオレオレ詐欺の台詞を堂々と言うこの声は、もちろん知ってる人物のものだ。

「改めましてー。竹本書房の高田ですけどぉ〜!」
「知ってます」

 私のお気に入りの本屋である竹本書房のアルバイト店員、高田さんの声である。彼女から電話が来る時は新刊や予約本の入荷お知らせが主なので、私は電光石火のスピードで電話に出るようにしている。

「相変わらずつれないなぁ栞里ちゃんは。ツンデレ? クーデレ?」
「ご用件は」

 突っ込むのもめんどくさいので先を促す。まぁ、このくらいでへこたれるような性格ではないのは百も承知だ。