その答えは恋文で


「日時とかはまた改めて連絡するから。ちゃんと予定空けといてね?」

 彰くんの、優しさを演出している垂れ目の泣きボクロが憎くて仕方ない。だって、他の人が見れば紳士的に笑うイケメンにしか見えない。実際は有無を言わせない黒い台詞を吐いているというのに。

 拒否権のない私は渋々ながら頷いた。……浴衣、どこにしまったっけ。ていうかそもそもあったっけ?

「そうだ、これ」
「なんですか腹黒彰くん」

 彰くんは自分の鞄をガサガサとあさると、中から小袋を二つ取り出して私に差し出した。そのパッケージには見覚えがある。私がよく食べているチョコレートだ。夏でも溶けにくく、手にもベタ付かないで食べられるいう優れもの。

「テスト頑張ったご褒美」
「え?」
「読書のお供にドーゾ」

 こうやって不機嫌になる私を読んで準備していたのだろうか。飴と鞭の使い方が半端ない。彼なら歌舞伎町でナンバーワンも夢じゃないだろう。

「……ありがとう」
「じゃあまたね。お祭り楽しみにしてるから」

 彼の小さくなっていく背中を見送った。こうやってしっかり家の前まで送ってくれるところがまた……上手いんだよなぁ。

 私ははぁ、と溜息をついた。なんだかどっと疲れたので、今から夕食を食べてお風呂に入ってすぐ寝るとしよう。読書はその後だ。