その答えは恋文で


「ああもうこんなとこに居たっ!!」

 怒ったような大声に私たちは振り向いた。

「ちょっと塚本!! アンタ週番でしょ! 科学室に来いって千葉から伝言!」

 この声、語り口調には聞き覚えがある。塚本くんの後ろ側に仁王立ちしている彼女は間違いない、こないだ私を呼び出した神田さんだ。

「えっ?」

 彼女の姿を見た瞬間、塚本くんが焦ったように目を見開いた……気がした。

「あ~神田ちゃんだ~! いやぁ、神田ちゃんが俺のこと迎えに来てくれるなんて光栄だなぁ~!」
「バカな事言ってないで早く行けば? てか来たくて来たんじゃないし! アンタがいないせいであたしが呼んで来いって頼まれたの!」

 だが、ニコニコと笑う塚本くんはいつも通りチャラさ全開のテンションだった。……さっき感じた違和感は気のせいだったのだろうか。

 神田さんは彰くんをチラリと見てから隣の私に視線を移す。瞬間、苦虫を噛み潰したような顔をしてそっぽを向いた。……わぁ、露骨。ここまではっきり嫌いだという態度を示されると潔くて逆に良い。

「ほらほら神田ちゃんも一緒に行こ! 手伝ってよ~」
「はぁ!? なんであたしが!」
「あとでプリン奢るからさ! 好きでしょ? ね?」

 神田さんの背中をぐいぐいと押しながら、塚本くんは足早に教室を出る。去り際にこちらに向かってウィンクのようなものを投げ掛けていた気がしたが、あれはきっと照明が眩しかったに違いない。