「……で?」

 ようやく一息ついたのに、平岡くんはまだ何か不満があるのか言葉を続けた。そんな風に漠然と言われても私には通じないんだけど。私の思考を読み取ったのか、平岡くんは丁寧に話し出した。

「成瀬さんが女子に呼び出されて危ない目に遭いそうなところを塚本が助けた、っていうのは分かった。じゃあさ、塚本が成瀬さんの事好きになったって話はどういう事?」

 ああ、その事か。というか、その話はむしろこっちが聞きたいくらいである。塚本くんの考えなんて私にわかるはずないじゃないか。今度は私の眉間に皺が寄った。

「それは私にもわからない。でも塚本くん、自分で博愛主義者とか言ってるくらいだしからかってるだけだと思う」
「塚本のことだからなぁ……」

 彼の言動は平岡くんでも予測不能らしい。

 というか、今更ながら女の子限定の博愛主義者って意味がわからない。女の子に限ってる時点で博愛ではないと思うのだけれど。どちらかと言えばフェミニストなんじゃない? 違う?

「あー……あのさ」
「え?」

 さっきまでの威勢はどこにいったのか、妙に歯切れ悪く平岡くんが切り出した。

「もし嫌じゃなければ……なんだけど」
「なに?」

 あーとかうーとかいう唸り声ばかりで、なかなか本題に入らない彼の言葉を私は大人しく待っていた。どうしたんだろう。平岡くんらしくない。様子を伺うようにチラリとこちらを見た平岡くんが、ようやく口を開いた。